70年の米国勢調査では、25〜34歳の男女で親と同居するパラサイトは、8%にも及ばなかった。
にもかかわらず、03年には親元を出ない男女が、18〜34歳の3割にものぼるほど増えてしまったのだ。
その傾向が顕著になったのは、9.11以降。
よって、有識者の多くは「テロ後の雇用不安と安全不安によって、パラサイトが増えた」と分析する。
近年イタリアで、独身のイエラブ男性がさらに増えたのも、同じような経済的事由がありそうだ。
日本でも「親元に同居するパラサイトの増加が、独身男女の増加を招く」との見方も強い。
だが09年、再びジャーナリストのS氏と対談したとき、興味深い話を聞いた。
彼女が「婚活」の講演で回ったいくつかの自治体で、空き室が多い“団地”を地元の独身男女に向けて(格安で)開放、日常生活の中での自然な出会い(エコ恋愛)を促しているというのだ。
「まずは親元から追い出す、との発想。実際、そこで出会って結婚した男女も何組かいるそうです」とS氏。
なるほど、これも有効な手段の1つかもしれない。
一方で、いまの未婚化の背景に複雑な問題が隠れているなら、大人がいたずらに「結婚しろ」「子作りせよ」と煽ったところで、簡単に解決するとは思えない。
「若いクセに、エッチしないでどうする」なんて煽って、結婚前に子作りするカップルが増えても、日本は制度でそれを温かく受け止めてくれる国でもない。
だったら大人がすべきことは、「燃えるような恋をしろ」と煽ることではない。
あえてもう1つ挙げるなら、エコ恋愛族の男女の“出会い”を後押しすること。
「少子化社会に関する国際意識調査」を改めて見直してみた。
「異性との交際経験ナシ」が目立って多いのは、予想どおり日本。
20代では「交際経験ナシ」が、女性の8%に対して、男性では24%もいる。
男女の間で圧倒的な“モテ格差”が見てとれる結果だ。
逆に「交際経験ナシ」が極端に少ないのが、アメリカ。
20代男性では7%、女性ではたったの1%しかいない。
ではなぜ、アメリカではこれほど多くの男女が付き合っているのか?秘密は、どうやら“カップル文化”にありそうだ。
09年1月、アメリカ初の黒人大統領、民主党のO氏が、約200万人の大観衆が見守るなか歴史的な就任演説を行った。
その直後のパーティで、妻とダンスを踊る彼を見て、改めて「ああ」と思った人も多いだろう。
アメリカは完全なカップル社会、公式の場には妻を伴うのが一般的だ。
結婚前にもカップルでいることが奨励されるシーンが、複数ある。
代表的なのが“プロム”。
「プロムナード(舞踏による行進)」が語源で、高校や大学の卒業記念などに行われるフォーマルなダンスパーティだ。
参加は原則として男女ペア、パートナー選びは男性が行うのが通例とされる。
SF映画の『BTF』(85年)や、ホラー映画の『C』(76年)をご覧になった方は、すぐにピンとくるだろう。
前者で、プロムは主人公マーティの両親が恋におちるロマンチックなシーンとして登場するが、後者では一緒に行ってくれる相手(男性)がなかなか見つからないキャリーの苦悩が描かれていて、いかに恋人がいない男女が肩身の狭い思いを強いられるか、がよく分かる。
つまり10代の頃から、すでに誰の目にも“モテ格差”は歴然なわけだ。
バレンタインにチョコレートの数を競うどころの比ではない。
小学生時代に『C』を観た私は、しみじみこう思った。
「アメリカに生まれなくてよかった」と。
プロムが近づくと、男性は正装用のタキシードやカマーバンドを新調し、女性はドレスやジュエリーを買ってヘアスタイルやネイルアートにも凝る。
プレゼント用のブーケやカードが飛ぶように売れ、リムジンをチャーターする男性までいて、日本ではめっきり廃れてしまった“恋愛消費”の健在ぶりを見せつける。
人気ファッション誌の『S』や『T』までが、春になると必ず、セレブなプロムファッションの大特集を組むほどだ。
日本でこんな残酷なイベントを企画する学校は、まずない。
本や映画にもほとんど登場しない。
唯一、10代の青春群像と恋愛模様を描いた大ヒットドラマ『H』では、クライマックスで卒業記念のダンスパーティ「英徳学園卒業プロム」のシーンが出てくるが、あれは異例中の異例だろう。
女性はレディとして振舞い、男性は紳士として女性をエスコートすることで、レディファーストが根付いた社交場へのデビューを果たす。
大人の世界への登竜門、というわけだ。
一見すると、モテ格差を露呈させる弱肉強食イベント。
でもそのプロムを、価値あるイベントとして評価する識者もいる。
その1人が、C大学大学院修士で、米国ニュージャージー州在住の作家R氏。
彼は、同じく作家のM氏が編集長を務める『JMM』に次のひと言を寄せた。
「プロムは次世代に向けて、男女交際が“善”であるという強いメッセージを送るイベント」「このメッセージが、出生率の維持に貢献している可能性も高い」
なるほど、言い得て妙だ。
日本社会では、総じてティーンの男女交際を「勉強や部活の妨げになる」などと言って、快く思わない。
それに対し、アメリカはプロムを通じて大人たちが“男女交際は歓迎すべきもの”と明確に表明することで、カップル文化をいまだに堅持できている、というわけだ。
R氏によると、プロムは近年のアメリカでますます盛んになっているという。
最近は卒業学年の1年前に「ジュニアプロム」が行われたり、中学校で学校主催のダンスパーティが行われるケースも増えたそうだ。
日本では、「10代の若い男女に『どんどん恋愛しなさい』と奨励すれば、道を踏み外す若者も増えるのでは?」と見る向きもある。
「すでに高1の3割超が性経験者なのだから、これ以上セックスが早期化したら大変なことになる」と懸念する声も大きい。
だがそれは大人の屁理屈だし、現状の誤解だ。
まず第一に、「若者の恋愛=即エッチ」と考えるのは短絡的。
いまの若者は昔より賢いから、誰もが衝動的な恋愛に走るわけではない。
第二に、恋愛を鼓舞しながらも、避妊や性感染症を含めた性教育をしっかり行えば、最悪の事態は防げるはずだ。
第三に、昨今言われる性の乱れは、一部の若者の間でだけ起きている現象。
K氏も、以前こう教えてくれた。
「マスコミは、あたかもセックスの低年齢化が進行しているかのように書くが、実は極端に2極化しているだけ。
一般的な日本の若者に対しては、“性交禁止”ではなく“性交指導”、つまり正しいセックスを奨励する教育が必要なぐらいだ」と。
一方、欧米の性事情に詳しいジャーナリストS氏も、09年3月の新聞紙上でこう述べた。
「欧米でも性におぼれる子どもに共通するのは、寂しい家庭環境と貧しい食生活なのです」(09年3月14日付S新聞)と。
そう、先ほどのS藤博士のコメントにあったように、性もまた、貧しい経済状況や家族関係、コミュニケーション不全などの問題と複雑に絡み合っている問題。
大人が10代の若者に「恋愛っていいよ」と勧めたからといって、それが性の乱れに直結するという単純なものではない。
にもかかわらず、日本の大人達は10代の若者に「恋愛なんてまだ早い」といったメッセージを送り続ける。
おそらく地方に行けば行くほど、その偏見は根強い。
10年以上前だが、北陸に住む私の従姉妹の生徒手帳(高校)には、なんと「男女交際しているカップルを見つけたら、先生に通報すること」との一文が、校則として書かれていた。
通報した高校生は、ご褒美として千円分の図書券がもらえたそうだ。
10代のうちは、恋愛を汚らわしいことのように扱う。
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